これまで、窓まわりのアイテムといえば「光を遮る」「視線を遮る」といった役割が主でした。しかし今、ブラインドが“電気を生み出す”時代に突入しようとしています。
この革新的な製品を開発したのは、住宅設備の大手メーカー「LIXIL(リクシル)」です。同社が発表した《PVロールスクリーンシステム》は、太陽光発電ができる世界初のロール型ブラインド。室内に取り付けるだけで発電が可能になります。
遮光性を備えながら、日中は発電をし、必要なデバイスに電気を供給できる──。今までにない発想の製品として注目されており、災害対策、エネルギー自給、環境対策など、さまざまな社会課題の解決にもつながる可能性を秘めています。
そんな未来型ブラインド「PVロールスクリーン」の仕組み、性能、活用メリットについて、わかりやすく解説します。
遮光も、発電も。1枚で暮らしを変える次世代ブラインドの機能性

(画像元:LIXIL)
PVロールスクリーンの最大の特長は、「遮光ブラインド」でありながら「太陽光発電装置」としても機能する二刀流の性能にあります。デザインは「ファブリックタイプ」と「スケルトンタイプ」の2種から選べます。
PVロールスクリーンで実現する主な機能:
・光の調整(遮光)
・外部からの視線カット(プライバシー保護)
・太陽光発電(室内設置型)
・給電(スマートフォンやPCなど)
特筆すべきはその発電力です。晴れた日であれば、1日あたりスマートフォン約9台分、またはノートPC約3台分の電力を確保できる能力があります。
通常使用ではモバイル機器の充電用として、また災害時には非常用電源として活躍します。特にライフラインが断たれる災害時には、「たった1枚のブラインドが命綱」となる可能性すらあるのです。
省エネ・断熱性能にも配慮した設計
ロールスクリーンと窓の間に空気層を設ける構造により、断熱性を向上。冬は冷気を防ぎ、夏は外の熱気を遮断して室内の温度上昇を抑えてくれるので、年間を通じてエアコン負荷を軽減でき、省エネ効果が期待されます。
また、視界の確保も柔軟です。日中、発電しながら遮光・断熱の役割を果たしますが、スクリーンは巻き上げ可能なので、必要な時には窓からの眺望や自然光も取り入れられます。
一般的な太陽光発電は常に「視界を遮る」ことになるかと思いますが、PVロールスクリーンならライフスタイルや天候、時間帯に合わせて柔軟に使い分けができるので、住環境において非常に大きなメリットです。
工事不要で“後付け”できることで広がる可能性

LIXIL久居工場(画像元:LIXIL)
太陽光発電というと、屋根に大がかりなパネルを設置し、工事や配線が必要になる…というイメージがあるかもしれません。しかしPVロールスクリーンは、工事不要での室内側に取り付けるだけ。
- 工事スペースが不要
- 配線工事も不要
- 入居者への影響が少ない
という大きなメリットがあります。特に既築のオフィスビルや公共施設など、「屋根には設置できないが、太陽光発電を取り入れたい」というニーズにぴったりです。
さらに、PVロールスクリーンは環境への影響にも配慮されています。試算では、全国の既築ビルの窓面(約1.4億㎡)に本製品を導入した場合、建設セクターのCO₂削減目標(2030年)のおよそ12%をカバーできるそう。
これは、環境省や国土交通省が掲げるカーボンニュートラル施策とも親和性が高く、まさに「小さな窓から始まるカーボンニュートラル」として、法人・行政ともに導入が加速する可能性があるのではないでしょうか。
まとめ:窓から始めるエネルギー革命
ブラインドが「日差しを遮る」だけの時代は終わりを迎えようとしています。これからは、遮りながら電気を生み出すという新たな価値観が、私たちの暮らしに加わります。
LIXILの「PVロールスクリーンシステム」は、今ある窓に“未来のエネルギー”を後付けできる画期的な製品です。脱炭素社会の実現、災害への備え、そして省エネな暮らし――それらすべてを、たった1枚のブラインドが叶えてくれるかもしれません。
今後の一般住宅への導入展開にも注目しながら、サステナブルな窓まわりの新たな選択肢として、ぜひ注目してみてください。

概要図(画像元:LIXIL)
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